双極性障害
双極性障害とは?
双極性障害は、気分障害に分類されており、うつ状態だけでなくて対極の躁状態もみられる病気です。
躁うつ病ともいわれています。
軽度な場合には、本人や周囲の人も何とか生活を送ることができます。
ですが症状がひどいと仕事や家庭に重大な支障を来し、人間関係や社会的信用を失うなど、人生の基盤を大きく損なうことも起こり得る病気になります。
こうした気分の波によって振り回されてしまうことが続くと、「自分は生きる価値のない人間だと感じる」「死にたくなる」という思いが強くなってしまう症状(希死念慮)が強まってしまいます。
行動に移されてしまう方も少なくなく、しっかりと治療が必要になる病気です。
双極性障害は生まれ持っての脳の機能異常
このような気分の波は生まれ持った脳の機能的な異常が背景としてあり、遺伝的な傾向も比較的強いといわれています。
ですから、気分の安定を図るためにはお薬の役割も重要となります。
このように気分の波が生まれ持って大きいという特徴がありますが、躁状態のようにエネルギーが他の人より高く、それがうまく発揮されると、社会的にも成功されていることも少なくありません。
お薬の力もサポートにしながら、気分の波との付き合い方を見つけていきましょう。
原因
双極性障害の原因は、何らかの脳の機能的異常が背景にあるのではと考えられています。
心の病気の中では遺伝の要因が大きな病気といわれていて、親が双極性障害である場合は、およそ10倍にリスクが高まるといわれています。
また双極性障害になりやすい性格傾向として、
- 循環気質:社交的で周囲に同調しようとする気質
- 執着気質:熱しやすく冷めにくく、切り替えがしにくい気質
などが知られています。
双極性障害は遺伝だけが要因ではない
それ以外にも、養育環境や社会でのストレス、生活リズムの乱れなどが重なり、双極性障害を発症すると考えられています。
このように双極性障害は、遺伝のみが原因というわけではなく、生まれもった要因と環境要因が重なって発症すると考えられています。
そして脳の機能的な異常によるもの(内因性)ですので、お薬の役割が大きな病気となります。
症状
双極性障害は、うつ状態と躁状態を繰り返す病気ですが、人によってその症状のあらわれかたは異なります。
多くの場合がうつ状態を中心として、ときおり躁状態が認められます。
まずは、それぞれの状態の症状をご紹介します。
躁状態
躁状態の時には、病的にエネルギーが高まります。
その程度によってⅠ型とⅡ型に分類され、Ⅰ型の方が重度で躁状態、Ⅱ型は軽躁状態と呼ばれます。
躁状態では、ほとんど寝ることなく動き回り、多弁になります。
仕事に対してはエネルギッシュなのですが、一つのことに集中できなく、結果何も処理できない状況となることもあります。
また、失敗の可能性が高い無茶なことに手を出したり、高額な買い物をしてしまったりと、法的な問題を引き起こす場合もあります。
家族や職場などに迷惑をかけ、一気に社会的信頼を失う危険性もあります。
軽度の躁状態では周囲に迷惑をかけることは少ないですが、明らかにいつもよりは「ハイテンション」となり対人関係でも積極的になります。
重症度に関わらず共通していることは、大きなトラブルを起こしていたとしても、本人は困っておらず、躁状態になっていることに気付かず「調子が良い=普通」と思っていることです。
うつ状態
躁状態とは逆に、双極性障害の人が「調子が悪い」「具合が悪い」と感じるのがうつ状態の時です。
何とも言えないうっとうしい気分が一日中、何日も続くのが特徴で、何に対しても興味がなくなり、楽しい気分にはなれなくなります。
いわゆるうつ病と同様に病的なエネルギーの低下になりますが、うつ病の症状とは少し異なっていることも多いです。
- 不眠ではなく過眠
- 食欲低下ではなく過食
- 過度な倦怠感
などが認められることがあります。
いわゆる非定型うつ病と同じような症状を認めることがあり、診断が難しい病気です。
それぞれの期間
双極性障害では、うつ状態の期間の方が長いといわれています。
双極性障害の患者さんを10年以上追跡した研究では、以下のように報告されています。
双極性障害は、季節や出産などに伴う症状の変化が認められやすいといわれています。
日照時間が短くなり寒くなる冬に調子が悪くなり、倦怠感や過眠などが強まることが多いです。
治療の方針
双極性障害の治療としては、
- お薬によって気分の安定をみつける
- リズムを整え、気分の変化やストレスに対処できるようになる
という2つを大切にして治療を進めていきます。
お薬の目的
脳の機能的障害が背景に大きいため、お薬によって症状のコントロールを図っていくことが重要です。
お薬は2つの目的で使っていきます。
- 躁症状やうつ症状の改善
- 気分の波を和らげる
躁症状やうつ症状を改善することで、気分の波の振れ幅を小さくします。
躁状態では家庭や職場などでのトラブルになってしまうこともあり、うつ状態では本人の苦しみが大きいです。
また双極性障害は、気分の波自体をゆるやかにして和らげる必要があります。
横に引き延ばすイメージになります。
このようにして、気分の波を小さく穏やかにしていきます。
お薬による治療
このため、双極性障害の治療薬には3つの役割を期待していきます。
- 躁の改善(上の波を抑える)
- うつの改善(下の波を支える)
- 再発予防(波をおだやかにする)
具体的には、
- 気分安定薬:リーマス・デパケン・ラミクタールなど
- 抗精神病薬:エビリファイ・ジプレキサ・セロクエル・ラツーダなど
を中心に調整していきます。
うつ症状の改善するお薬は少なく、やむなく抗うつ剤を慎重に使うこともありますが、波を激しくしてしまうこともあります。
双極性障害のうつ症状に対しては、TMS治療も効果が期待できます。
生活での治療
双極性障害の治療において、リズムを整えていくことで気分の波を穏やかにすることができます。
また気分の変わり目にうまく気づいて対処することで、気分の振れ幅を小さくすることもできるようになっていきます。
2つのリズムとは、
- 生活リズム
- 社会リズム
になります。
規則正しい生活習慣になります。
一定の時間に起床して3食をとり、ある程度の時間に就寝することになります。
双極性障害では過眠や不眠などが症状として認められることも多く、生活リズムを整えるために睡眠薬などを使うこともあります。
社会リズムとは、おもに対人関係のリズムになります。
厳密に行う場合は社会的な刺激を数字にして見えるようにし、量的にコントロールしていきます。
そこまで行わなくても、例えば1日の活動する時間を決めたり、2日の休日があれば1日は完全休日にするなど、調子が安定する生活のルールを決めていくことで気分を安定していきます。
また気分の変わり目に気付けるようになると、無理せず休みを取るようにしたりするなど意識することで、調子の振れ幅を小さくすることができるようになります。
またストレスになりやすいパターンがわかってくると、とらえ方を柔軟にしていく練習(認知行動療法)やストレスコーピング(ストレス対処法)によって振れ幅を小さくすることができるようになります。
双極性障害でお困りの方へ
こちらの記事では、双極性障害(躁うつ病)の症状や原因、治療についてご紹介してきました。
双極性障害は脳の機能的異常が背景にあり、中長期で付き合っていく必要がある病気になります。
双極性障害で悩まれている患者様は、手塚こころみクリニックにご相談ください。
さらに双極性障害について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了