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統合失調症

統合失調症とは?

統合失調症とは、幻聴や妄想といった症状が認められる病気です。

過去には「精神分裂病」という病名で呼ばれていました。

幻聴や妄想といった目立つ症状は陽性症状といわれていますが、病気の始まりは周囲への過敏さや緊張感などだけのこともあります。

幻覚や妄想に左右されてしまうと、自分が病気であるという認識もなくなってしまうことがあり、強制的な入院治療が必要になることもあります。

統合失調症はお薬の治療が大切

統合失調症は脳の機能的な異常が背景に大きいと考えられていて、思考がまとまらなくなってしまい、幻聴や妄想といった症状があらわれます。

それと同時に、感情や思考力といった本来あるべき機能が失われていく陰性症状も認められ、認知機能が少しずつ低下してしまいます。

おおよそ100人に1名ほどの方が発症する頻度の高い病気ですが、現在はお薬の進歩もあって、早期発見・早期治療を開始することで重症化を防ぐことがあります。

ですが根本的な治療がみつかっているわけではなく、お薬のしっかりとした服用が何より大切な病気になります。

原因

統合失調症の原因は、今のところ解明されていませんが、脳の構造や働きでの微妙な異常が原因となっているのではと考えられています。

そのような異常が起こる原因ははっきりとわかっていませんが、遺伝要因と環境要因が重なることで発症すると考えられています。

ストレス脆弱性仮説と呼ばれていますが、もともと病気になりやすい遺伝要因がある方に、環境ストレスが重なることで発症すると考えられています。

症状をイメージしやすい仮説

統合失調症の患者さんの脳でどのような機能異常が引き起こされているかについても様々な説がありますが、視床フィルター仮説をご紹介します。

視床では、必要な感覚とそうでないものの強弱をつけ、感覚の量を調整しているといわれています。

その機能が障害されることで、大脳に過剰な刺激が伝わってしまい、物事に過敏になり、情報をうまくまとめられなくなってしまいます。

その結果、あるはずのない幻聴や妄想といった陽性症状が生み出されていくと考えられています。

このように統合失調症の原因はわからないことだらけですが、脳内の神経伝達物質であるドパミンの異常が生じていることはわかっています。

このドパミンを抑える治療薬によって、統合失調症の症状をコントロールできるようになってきています。

症状

統合失調症は患者さんによっても、さまざまな症状があらわれます。それらの症状を大きく分けると、以下のようになります。

  • 陽性症状:ないはずのものがあらわれる症状
  • 陰性症状:あるはずの機能が失われる症状

これらの症状があいまって、少しずつ認知機能の低下が進んでしまいます。

陽性症状

陽性症状としては、幻覚や妄想といった目立った症状になります。

幻覚とは、実際には実在しないものが感覚として感じられることをいいます。

統合失調症で代表的なのは幻聴で、自分を批判する内容や命令される内容、監視されている内容が聞こえてくることが多いです。

幻聴を聞いてニヤニヤ笑ったり(空笑)、幻聴に対しブツブツと返答する(独語)といった形で、周囲からは奇妙に見られてしまうこともあります。

妄想は、明らかに誤った内容であるのに信じてしまい、まわりから訂正することが不可能です。

  • 被害妄想:電磁波で攻撃をされている
  • 迫害妄想:すれ違いざまに敵に襲われる
  • 関係妄想:近所の人が自分の悪口を言っている
  • 注察妄想:道を歩くとチラチラと自分を見る
  • 追跡妄想:尾行されている

といった自分の考えや行動に対して悪い働きがあることばかりですが、「自分は特別な存在である」といった誇大妄想が認められることもあります。

また、自我障害といって、誰かにコントロールされているような感覚が見られることがあります。

  • 思考吹入:他人の考えが入ってくる
  • 思考奪取:他人に考えが奪われる
  • 考想伝播:自分の考えが周りに伝わる
  • 考想化声:考えていることが声になる
  • 作為体験:他人に操られている

というように、自分と他人の境界があやふやになってしまい、思考や行動が混乱してしまいます。

陰性症状

陰性症状とは、本来あるべき機能がなくなってしまう症状になります。

陽性症状のように目立ちはしませんが、お薬によっての改善も限定的で、少しずつ日常生活を通して改善していく必要があります。

そういった意味では、長く影響する症状になります。

よくある陰性症状としては、

  • 意欲減退:意欲や気力がわかなくなる
  • 感情鈍麻や平板化:喜怒哀楽が乏しくなる
  • 連合弛緩:思考のまとまりが悪くなる
  • 思考低下:思考力が低下して会話がへる
  • コミュニケーションの低下:他人と関わりをもたず引きこもる

といったことがあります。

このため少しずつ他人との交流を避けるようになり、部屋にとじこもって目的なく生活するようになってしまう(無為自閉)といったこともあります。

症状の経過

統合失調症の症状は、大きく4つの時期に分けることができます。

  • 前兆期(前駆期)
  • 急性期
  • 休息期
  • 回復期

前兆期の症状を見極めるのは非常に難しいです。

過敏さが強くなり、思考障害などが何となくあらわれてくるのですが、他の心の病気でも認められる症状が多いです。

明らかな陽性症状が認められて診断確定したあとでは、病状悪化のサインとなります。

急性期になると、幻聴や妄想、自我障害といった陽性症状が目立つようになります。

このようなときは病気であるという認識すら持てなくなることもあり、強制的な入院治療が必要になることもあります。

休息期は、脳が疲弊してしまっていて回復を必要とする時期です。

意欲や気力がおきず、睡眠時間が長くなって傾眠がちになることもあります。

回復期は、少しずつ意欲と気力が戻ってきて、本来の力を取り戻してくる時期です。

しかしながら失った現実と向き合う必要がでてくるので、あせらずにリハビリをして回復を目指していく必要があります。

悪化を繰り返すと社会機能が落ちていく

このような症状経過をたどっていきますが、統合失調症の大きな特徴として、回復が限定的になってしまうことがあります。

統合失調症は、急性期の症状を繰り返すにつれてエネルギー水準(社会機能)が下がってしまいます。

このことを、ニボーの低下(niveau:フランス語で水準)といったりします。

このニボーの低下は、診断をする上での大きな参考になります。

統合失調症の症状による3つのタイプ

統合失調症といえば、幻聴や妄想の病気というイメージが強いかと思います。

このような統合失調症を、妄想型といいます。

実は統合失調症には、全部で3つあります。

  • 妄想型
  • 緊張型
  • 破瓜型

※それ以外にも単純型という分類もありますが、陽性症状が目立たないだけという考え方がなされることもあるので割愛します。

妄想型は、幻聴と妄想が特徴的で、20~30代に発症することが多いです。

ほかのタイプと比べて、発症が遅めになります。

ひどくなると病識がなくなってしまいますが、お薬によって症状がコントロールできることも多く、しっかりと服薬を継続すれば、社会生活を送れる方も多いです。

緊張型は、突然に激しい興奮状態になったり、その反対に意欲が極端になくなり、外部の刺激に反応しなくなる昏迷状態になったりします。

20歳前後に発症して症状は目立つのですが、お薬の効果が期待できて予後は良好です。

破瓜型は、10代半ばごろの思春期から発症します。

派手な症状は見えないのですが、思考と行動がまとまらなくなってしまいます。

自分の感情や意思をもって行動することができなくなり、周囲への関心も失って人格が保てなくなってしまいます。薬の効果も悪く、予後は良くありません。

治療

統合失調症の治療にはお薬の役割は非常に重要で、症状が良くなってもお薬を欠かすことができません。

ドパミンをブロックするお薬が効果的であることがわかっていて、これらのお薬は抗精神病薬と呼ばれています。

抗精神病薬も様々なタイプが発売されているので、効果と副作用のバランスをみながら、総合的にあっているお薬を見つけていきます。

薬物療法を中止してしまうと、1年以内に7割以上が再発してしまうといわれています。

お薬によって症状がよくなると辞めてしまいたくなるかもしれませんが、再発の理由として最も多いのがお薬の自己中断になります。

残念ながら統合失調症の原因はわかっておらず、お薬をやめてしまうと病状は悪化してしまいます。

お薬以外の治療も大切

このように薬物療法は大切ですが、心理療法や生活訓練なども大切です。

お薬と併用することで、再発率が下がることがわかっています。
適応しやすい考え方や生活の方法を身に着けることでストレスが軽減されることで、統合失調症の再発リスクを減らすことができます。

このため回復期にはいったら、患者さんごとに適切な環境でリハビリを行っていくことが大切です。

デイケアや作業所、就労移行支援事業所や理解ある職場など、日常生活の中でリハビリする場所をもつことで、統合失調症の病状は安定に向かいます。

統合失調症でお困りの方へ

こちらの記事では、統合失調症の症状や原因、治療についてご紹介してきました。

統合失調症は、お薬の進歩の恩恵をうけた最大の病気になります。

必要なお薬の服用を続けていれば、変わりない生活を過ごすことができます。

その一方でお薬を使わないでいると、病気であるという自覚がなくなってしまい、入院加療が必要となることも少なくありません。

統合失調症でお薬がきまって安定している方は、手塚こころみクリニックにご相談ください。

さらに統合失調症についてさらに詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。

統合失調症のページ(田町三田院HP)

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

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